肉食御曹司に迫られて
奈々の事情を多少知っている藤堂は、日頃の異常な程までの、冷静さや、冷たさは作られた物ということは、気が付いていた。そして無理をしているのも。

しばらく、無言の車内が続いたが、藤堂が口を開いた。
「何かあったのか?」
奈々は、ドキっとした。
「どうしてですか?確かに、昨日ちょっと寝つきが悪くて。自己管理不足ですね。すみません。」
「…さっき寝ている時、泣いてた。」

「・・・。」
何も言わない奈々に、藤堂は
「悪かった。お前もいろいろ大変だもんな。」
と、目線は前を向いたまま言った。そして続けた。
「話したくなったら、いつでも相談に乗るから、こうやって抱え込むな。わかったか?話して楽になる事、甘えることは悪い事じゃない。」

「…はい。」
奈々は、藤堂の優しさに少し心が楽になるのを感じた。

「明日は、休みだったな?とりあえず、無理をせず、ゆっくり休め。」
「わかりました。」
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