ドメスティック・ラブ

 無鉄砲で脳天気な私と、根が真面目で面倒見の良いまっちゃん。お互い遠慮なく何でも言い合えるけれど相手を異性として見た事はなく、周りも私達をそんな眼で見る事なんてなくて、至って健全な友人関係を十年以上続けてきた。出会ってからはお互いどんな恋愛をしてきたのかだってリアルタイムに見て知っているし、愚痴を言い合ったり相談したりされたりもした。

 なのに。
 まさか本当に、そのまっちゃんと結婚する事になるなんて想像もしていなかった。

 あれは十二月最後の週末、年末直前に皆で日帰り温泉へ行った帰り。車に乗っていた面子を順番に送っていって、まっちゃんの家から一番近い私が最後の一人だった。

「ありがとー、楽しかった!家まで事故らないように帰ってね。お疲れー」

 家の前、いつもの様に御礼を言って、助手席のドアを開けて降りようとした時にまっちゃんが言ったのだ。

「しま、どうすんのあの約束」

「え?」

 正直なところ、私はその頃色々ゴタゴタしていたせいもあって、自分から言い出した癖にその口約束を綺麗に忘れ去っていた。

「お前あとちょっとで誕生日だろ」

 確かに私の誕生日は二月だけれど。

「誕生日来たら三十歳」

 そんなの言われなくても分かってるってば。だからこうして二十代最後を満喫しようと積極的に遊び歩いてるのに。
 なんて可愛くない事を考えていた時、ふと『三十歳』の単語から甦る記憶があった。

< 4 / 160 >

この作品をシェア

pagetop