ドメスティック・ラブ
二度寝の後、再び惰眠を貪っていた私を起こしたのはまっちゃんからかかってきた電話だった。
昨夜も今朝もバタバタしていた為、今日必要なUSBメモリーを家に忘れていってしまったらしい。しっかり者のまっちゃんがこんな忘れ物なんてするのは珍しいと思うけれど、まあ夜はお風呂で寝落ちるくらい疲れていた様だったし、朝も殆ど時間がなかったので仕方がない。
昼休みのタイミングで学校まで届ける様に頼まれたので、こうして私はまっちゃんの職場である私立高校の外壁に沿ってあるいているという訳だ。
待ち合わせは裏門とは言え、タイミングによっては職員に遭遇してしまう可能性もある。なので悩んだ末にシンプルでタイトなワンピースにジャケットを羽織り、メイクも普段よりも少ししっかりめにした。自分の職場には制服が有って通勤服は自由が許されているので、いつもの私はもう少しカジュアルだ。でも夫の職場に行くのにそれは微妙な気がするし。会わずに済むならそれに越したことはないけれど、一応万一の事を考えて。
裏門というからひっそりしているのかと思っていたら、大きめの通りに面した正面入口ではないというだけで、閉じられた鉄格子状の門の向こうは賑やかだった。ベンチがあってそこで昼食を取ってる生徒がいるし、バレーボールなんかしてる生徒もいる。渡り廊下もそばにあり生徒達が行き交っている。
まずい、これ絶対目立つ。
そう思いながら門の横にある通用口から少し離れた位置に立った瞬間、その扉が中から開いた。
「千晶、こっち。悪いな、折角の休みだったのに」
顔を出したまっちゃんが小さく手招きをしている。
朝ついていたはずの寝癖はなくなっていた。学校着いてから直したんだろうか。そういう所、そつがない。絶対生徒の前でみっともない姿なんて見せないタイプだもんね。
「特に予定はなかったから別にいいよ。これで良かった?」
電話で指定されたUSBメモリーを鞄から出して手渡す。