君とゆっくり恋をする。Ⅰ【第1話 〜第5話】(短編の連作です)


部署の飲み会はまだしも、〝そういう〟飲み会に顔を出すのは気が重い。敏生には結乃という想い人がいるのに、そんな敏生の気を引こうと女性たちは物言わぬオーラを漂わせる。その気迫のようなものを一身に受けて、窒息しそうになるのは目に見えている。

それに、気の置けない人間の前でないとアルコールは取らないことににしているし、こんなにチャラい鳥山と飲むなんて〝ストレス〟以外の何ものでもない。


「いや、遠慮します。まっったく興味ないんで」


敏生のつれない返答に、鳥山は「はぁぁ〜」と呆れたような大きなため息をついた。


「そんな潤いのないこと言ってると、仕事も上手くいかなくなるぜ?今は取引先の管理職も女性が増えてきてるし、扱い方やトレンドも押さえとくために、女の子とのコミュニケーションは大事だと思うけど?」


そんな人生勉強をしなくても、敏生の業務成績は鳥山よりもずっといい。
そもそも管理職になろうかという女性と、鳥山とノリで合コンをするような女性は、全く性質が違うだろう。そう思ったが、敏生は反論する気にもならなかった。


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