君とゆっくり恋をする。Ⅰ【第1話 〜第5話】(短編の連作です)



すると、結乃に贈るのは、やはりキャンディになるだろうか……。でも、ただキャンディだけだと、きちんとした贈り物としては物足りないような気もする……。
そう思いながら、さらにいろいろと調べてみると、もっと深い意味のあるものを見つけた。


――マカロンか……。


そこに込められている意味は、〝特別な人〟。それはまさに結乃のことだと思っただけで、敏生の胸がキュンと高鳴った。


「あれ~!?先輩~?」


その時、河合が敏生の背後から、パソコンの画面を覗き込んで声をあげた。


「ホワイトデーのお返しはしないって言ってたのに、何調べてるんですか~?」


河合の指摘を受けて、敏生は飛び上がらんばかりに驚いた。


「…えっ?!…やっ、これは!…ちょっと相談されたんだ!!」


敏生は焦ってそう言ってごまかしたが、仕事の虫の敏生が、オフィスでそんなサイトを見ていること自体、不自然なことだった。


「へぇ~、そうなんですかぁ~。先輩に相談するって、随分見当違いな人ですよね~?」


と、いつもの形勢とは逆転して、河合が余裕ありげに疑わしい目を向けてくる。その視線を牽制しながら、敏生はそそくさとサイトの画面を閉じた。


< 76 / 139 >

この作品をシェア

pagetop