失礼男の攻略法



「もう少しお話したいんですが、 飲みなおしませんか?」

ちょっと赤い顔でそういう中西さんの言葉に頷くと、エレベーターが向かった先はすぐ上のフロアだった。

「あの、別のところにしませんか?」

そう言ってみたものの

「ここカクテルがすごく美味しいんですよ。ね?」

繋がれた手に意識を持っていかれてしまい、それ以上抵抗することなんてできなかった。


“どうか、あの人がいませんように”


切実な私の祈りは通じることはなく・・・。

「いらっしゃいませ」

案内されたカウンターの中に、よく見知った顔があった。

「千秋さん、どういうのがお好みですか?」

そう言いながら見つめられて、ドキっとする。営業マンらしい爽やかな風貌と、ちょっと垂れた目がかわいい。いつも出勤前に寄るビル内のカフェで声をかけられた時も、この目にキュンとしたんだ。
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