失礼男の攻略法
「あの、これよかったら」
手がぶつかってコーヒーをこぼしてしまった時に、隣に座っていた中西さんがハンカチを貸してくれたのがきっかけだった。
ちゃんとアイロンがけされた清潔感たっぷりのハンカチをすぐさま渡してくれて、男の人なのに意外だなって思ったのが第一印象。そして、手から顔に視線を向けると、下がった目じりにキュンとした。
「あ、ありがとうございます」
そう言ってハンカチを受け取ると、その彼はすぐに腕にはまった時計を確認して
「もう行かないと」
と言って新聞を手にお店を出て行ってしまった。せめて名前だけでも聞いとけばよかった、と思ったけど、久々に素敵な男性に出会ったなと、その日一日ルンルン気分で職場のみんなに気持ち悪がられてしまったのは仕方ない。