不知火の姫
おじさんのいる部屋の前に着くと、私たちは足を止めた。大きくて立派な扉。その隙間からは暗い通路に中の光が零れている。


中に、いるんだ……


心臓が、もう破れそうなくらいドキドキしてる。不安に駆られて隣に立っている葉月を見ると、彼も私を見つめた。


きっと同じ……葉月もきっと、緊張してるんだ…………


「――――行くぞ……!」


葉月はそう言って私の手を握った。頷くと、彼はノックもせずに扉を開いた。




中へ入ると、仕事机にいたおじさんは顔を上げ、私たちだと分かると驚いた顔をした。


「――――葉月!? それに鈴も……どうしたんだ、こんな時間に」


私たちは手を繋いだまま、おじさんの前へ歩み出る。


「親父に、聞きたい事がある。俺と鈴は……兄妹なのか」


おじさんを睨みつけるように見ながら葉月がそう言うと、彼はハッと息を呑んだ。そして、深いため息を吐くと応接用のソファに促してくれた。




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