大切なもの【完結】
『なんとなく』



…はぁ?



「まず彩香と一緒じゃねぇのかよ」



彩香と一緒にいるのに俺にかけてきたとしたら悪趣味でしかないだろ。
たしか今日ふたりも同じお祭りの約束をしてたはずだ。



『彩香といたりしないよな?』


「は?いるわけねーだろ」



いま、彩香と一緒じゃないことはわかった。
ただ、なんで俺が彩香と一緒にいることになんだよ。
そう思って少しイラついてしまう。



『ごめん。彩香が30分も来なくて』


「電話は?」


『つながらないしLINEも既読にならない』



…ふーん。
だから俺といるんじゃないかって不安に?
もう少し彩香のこと信用しろよ。
そんで、昨日好きって言われたんだから自信持てよ。
俺が言われたかった言葉なんだぞ?



「もう飽きられたか」



少し意地悪してみたくなって笑ってみせる。
別に本気で思ってるわけではない。



『そんな早すぎんだろ』



本気にしたのか少し怒ったような口調になる。


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