大切なもの【完結】
「…んで、よりによって」


「四宮なのかって?」


「…あぁ」



お客さんなんかより数十倍気になる。



「四宮と連絡取ってたのかよ…」



別に連絡をとっちゃダメってことはない。
たしか、四宮は卒業式に彩香に告って振られたはず。
そんな相手とこうしてバイトをしていることが俺はすごい嫌だ。



「たまたまバイト先が四宮の家だったんじゃねぇの?」


「だったらいいけど…」



四宮と結構仲良かったはずだから、ここが四宮の実家だってことぐらい知ってるはずだ。



「まぁ、ただのバイト先の息子だろ」


「ただのね…」



四宮がただのクラスメイトだったら何も思わなかった。
こんなに気になるのは中学時代彩香のことを好きだったから。



「ま、気になるか」


「四宮と笑顔で話してるのがムカつく」



俺と過ごせない放課後に四宮とはこうして会って話すことができて。
バイトだとしても客がいない間はこうして2人の時間が流れるんだと思ったらすげぇ嫌だった。

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