大切なもの【完結】
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「あ、出てきた」



向かいのコンビニで本を読んでた俺の目にパン屋からでてくる彩香が見える。
悠貴は〝お腹空いたから帰るわ〟って途中で帰っていった。



「行くか」



彩香がコンビニを通り過ぎたのを確認して、コンビニから出る。
少し彩香から離れた距離で彩香を見る。

危ない目になんて遭ってほしくないからな。
これがいま俺に出来るただひとつのこと。
前にいるのは俺の彼女なのに、彩香が内緒にしたがるから声をかけることもできずストーカーみたいな感じになってしまう。



「彩香!」



少し離れた距離を保ったまま歩いてると後ろから彩香を呼ぶ声とバタバタと走る足音。
振り向かなくてもそれが誰だか容易に想像がつく。

彩香が振り向くので俺は近くの電柱にサッと隠れる。


ここで気づかれたらただのマヌケだ。

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