大切なもの【完結】
「いつになったら彩香とつきあうの?」


俺のこと上目遣いでみて、そんなことを言い出す。


「おまっ、なに言って...」


びっくりして桜苗のことをつかんでいた手を離す。


「動揺しすぎ」


力なく笑う。


「何あったの?」

「翔が...」

「...翔?」


〝翔〟


口から出た名前にどくんと胸がえぐられる。


「彩香に告白してた」


桜苗の口から出た現実に
聞こえないふりをしたかった。


「こく、はく」


俺はオウム返ししてみるが
やっぱりその言葉は〝告白〟で

みたくない現実だった。


「早く彩香を手に入れてよ」


桜苗が泣きながら俺の胸を叩く。


...俺が悪いのか?

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