大切なもの【完結】

壊せない─Ikuto

「郁人ー!あちーなっ」


部活終わりの翔が走ってくる。


「もう夏だもんな」


俺もワイシャツの胸元をバタバタさせる。


「郁人、今日ひま?」

「あー、なんもないよ」

「マックでもよってこーぜ」

「おお」


このときこの誘いを受けてなければ
よかったのかもしれない。

いや、でも
いつかはわかることだったんだ。
それが遅いか早いか。


「俺、着替えてくんな!」

「教室いるなー」

「おっけ!」


翔が元気に走っていく。
あいつはまじで元気だよな。


でも、そんな元気な翔にいつも救われてきたんだよな。


入学してすぐ俺に声かけてくれたのが翔で。
だから、すぐに友達ができた。

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