寄生虫
「でも、あたしがキッカケで克哉が変わろうとするなら、今じゃなくてもっと前だったんじゃないかなって思うんだよね」


真尋の言葉にあたしは言葉を失った。


確かにその通りだ。


真尋の為に努力するなら、付き合い始めた時から始める事ができた。


どうしてこのタイミングで克哉が変わろうと努力を始めたのかは、わからない。


「あたしよりもずっと影響力のある子が現れて、その子の為に頑張ってるのかも……」


真尋はそう言い、自傷的に笑った。


その笑顔が痛々しくて、あたしは喉をキュッと押さえつけられているような気分になった。


「だ……大丈夫だよ」


なんとか発した言葉がそんな言葉で、思わず自分の手の甲をつねった。


もっといい言葉があるはずだ。


この場面にふさわしい、真尋の元気を取り戻せるような言葉が。


それでも現実にこの場面に立つと頭の中は真っ白になり、何も言葉は浮かんでこない。


「ありがとう、サナギ」


真尋はあたしの幼稚な励ましにそう言い、お弁当に視線を落としたのだった。
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