寄生虫
「ここ数日の克哉は克哉じゃないみたいに見える。克哉と同じ顔をした、全くの別人みたいに」


よどみなくそう言う真尋に、克哉は眉を下げた。


辛そうな顔をしている。


「そんな……。俺はみんなが望んだ通りにしてるだけだ……」


みんなが望んだ通りに。


たしかにその通りだと思う。


今の克哉は真面目に授業を受けて、真面目に部活をしている。


特にサッカーに期待を置かれている克哉は、練習熱心になってくれてみんなは喜んでいるだろう。


これで将来有望なサッカー選手が誕生するかもしれないんだから。


でも……。


それは本来の克哉じゃないんだ。


勉強も練習もほどほどで、京介といつも一緒にいてバカをやったりして。


それが、あたしと真尋の知っている克哉なんだ。


「誰かに言われて自分を変えようとしているの?」


真尋が、聞きのがしてしまいそうなほど小さな声でそう言った。


「……いいや。ごめん、今日はもう帰るよ」


克哉は切ない表情を残したまま、部屋を出たのだった。
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