寄生虫
☆☆☆

克哉が部屋を出た後、重苦しい沈黙が下りてきた。


克哉にあんな顔をさせるためにここへ呼んだわけじゃない。


克哉が変わった理由を聞きたかっただけだった。


だけど、理由はとても簡単で、みんなが望んだから頑張ることにした。


ただそれだけのことだった。


それを、何か裏があると勘ぐっていた自分自身に、真尋は傷付いている様子だった。


「真尋、大丈夫?」


「あたし……最低」


今まで克哉が座っていた場所を見て、真尋はそう言った。


「真尋……」


「あたし、何度も克哉に言ってたの。もっと練習すればきっとプロでも通用できるようになる。勉強も、両立できるように手伝うからちゃんと頑張ろうよって」


以前の克哉を見ていたら、きっと誰もが1度はそんな事を言っただろう。


それでも克哉は克哉だった。


自分のやりたいことをやりたい時にやる。


そんな自由な性格をしていた。


「あたしが克哉を変えたのかもしれない」


「それなら、真尋が心配するような事はなにもないじゃない」


「違うの」


真尋はあたしの言葉を遮ってそう言った。


「元の克哉を壊したのかもしれない……」


そして、そう言ったのだった。
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