寄生虫
見たくない。


見ない方がいいと思いながら、あたしは克哉の顔にかけられている布に触れていた。


「おい、サナギ……」


京介の声を無視して、その布をめくる。


瞬間、苦痛に歪んだ克哉の顔を見た。


そしてその顔から出入りする大量の、ウジのような虫も。


あたしは咄嗟に後ずさりをしてベッドから離れる。


「うわっ!」


京介はそう叫び、飛びのいた。


ウジのような虫は克哉の口から出入りを繰り返し、ボトボトと床へ落ちてゆく。


「どう言う事ですか!?」


京介が焦ったような声でそう聞いた。


しかし、そこにいた誰もが返事をしなかった。


ただ涙を流し、左右に首をふる。


「克哉はこの部屋でシーツを使って首をつっていたの。その時にはもう、克哉の体の中から虫が……っ」


真尋が言葉を詰まらせながらそう言った。


「病院の先生も、全くわけがわからないって」


真尋の言葉に、克哉の母親が補足した。


あたしと京介はお悔やみの言葉を言う事もできず、その場に立ちつくしていたのだった。
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