寄生虫
調べる
克哉はシーツをベッドの枠にくくりつけ、それで自殺したのだそうだ。


当初ベッドの上には家族へあてた遺書が残されていて、自殺だと断定された。


遺書の内容を聞くと《俺はみんなに迷惑をかけてしまった。こんな俺はいない方がいいと思う》と、すごく曖昧なもので、しかし警察では克哉本人の字で間違いなかったとのことだった。


どうして。


なんで。


そんな言葉ばかりがあたしたちを追い詰めて行く。


みんなに迷惑をかけた?


それは練習で2度も倒れたからだろうか?


それとも、何か他に重要な事でもあっただろうか?


思い出そうとしてみても、克哉が自殺しなければならないような出来ごとは何も思い出せなかった。


司法解剖の結果克哉の体内には大量の虫がいたということがわかったらしい。


しかし、通常生きている人間の体内に、しかも出入りできるような場所に大量の虫が存在するなんて考えられない。


克哉は死ぬ前に自分からその虫を大量に飲みこんだんじゃないかと、聞かされていた。


重度の熱中症にかかると幻覚を見る事もある。


克哉は一旦症状が治まったものの後遺症として自律神経失調症を発症し、自分でも思いもよらぬ行動に出て自殺してしまった。


それが、克哉の両親から聞いた自殺の原因だった。
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