寄生虫
「全く、お姉ちゃんはあんなにしっかりしているのに、サナギはマイペースなんだから。今日はお母さん同窓会があるから、学校から帰ったら洗濯物をお願いね」


お母さんはそんな文句を言いながら、洗濯物を干すために二階へと上がって行った。


あたしとバラは見た目も中身も対照的だと、あたしは自覚していた。


幼稚園時代からみんなの輪の中心にいて、話すと人を笑顔にするのがバラ。


みんなの輪の中にいても存在感がなく、思い切って意見を出してみると驚いた顔で見られるのがあたしだった。


バラとサナギ。


その名前の通りに育っていると思う。


あたしは適当に髪をとかしてひとつに結ぶと、ようやく家を出た。


家から学校までは徒歩10分くらいだけれど、もう走らないと間に合わない時間だ。


「よし」


あたしは息を吸い込んで、そう呟いた。


よーい、どん!


心の中で合図を送り、走りだす。


風を切り自転車を追い越してぐんぐんスピードを上げていく。


あ、バラに勝てることがあたしにも1つだけある。


それは、足の速さだった。
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