寄生虫
他の子たちに京介を持っていかれてしまう前に、気持ちくらい伝えておかなくちゃ……。


そう思うのに、言葉は喉の奥に張り付いて出てこなかった。


「そう言えば、室井さんもこの前何か言いかけてたなぁ」


「へ……」


喉の奥の言葉はそのまま飲みこまれ、消化されてしまった。


「結局なんだったのかわからなかったんだけど、あの時の室井さんは顔を真っ赤にさせてたから印象的だったんだ」


顔を……真っ赤に……?


それは京介に告白しようとしていたって事なんじゃないだろうか?


何かが邪魔をして、もしくは勇気が出なくて断念したのかもしれないけれど、異性の前で真っ赤になるなんて告白くらいしか思いつかない。


あたしは無意識の内に右腕をかいていた。


いつの間にかかゆみがぶり返してきていて、爪を立ててひっかく。


「おい、大丈夫か?」


そんなあたしに気が付いて京介が眉間にシワを寄せた。


「うん……」


あたしは小さく頷いて、再び歩き出したのだった。
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