寄生虫
☆☆☆

結局、告白はできなかった。


家まで送ってくれた京介だけれど、その間の会話の内容はほとんどが室井さんの事だった。


京介もきっと室井さんという子の事が好きなんだろう。


ストレスを発散するために出かけたのに、気になる事が1つ増えてしまっただけだった。


「ただいま……」


落ち込んで玄関を開けると、目の前のリビングのドアからバラが出て来た所で「暗い顔して」と、しかめっ面をされてしまった。


あたしはバラを無視してキッチンへと向かった。


コップにミネラルウォーターを注いて一気に飲み干す。


最後の一口が気管に入り、激しくむせた。


嫌な気持ちを、室井さんの話を飲みこんでしまおうと思ったのに、それはあらぬ場所へと入ってあたしの中からは出て行ってくれない。


それ所か、しっかり現実を見る事のできないあたしを更に苦しめる。


「サナギ、帰ってたの?」


お母さんがそう言い、せき込んでいるあたしの背中を慌ててさすった。


「慌てて水を飲むからむせるのよ」


呆れた声が聞こえてくる。


あたしは涙目になりながら頷いた。


その通りだ。


あたしはいつも早すぎるか、遅すぎるかなんだ。


タイミングがわからない。


だから、バラのようにうまく動くこともできないんだ……。
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