寄生虫
☆☆☆

呆然として床に座り込んでいると、ノック音が響いた。


「はい……」


気の抜けた声で返事をすると、バラが顔をのぞかせた。


今、あまり会いたくない相手だったけれど嫌な顔を浮かべるほどの元気も残っていなかった。


「服、捨てたの?」


「うん」


「ふぅん」


バラがクローゼットの前に立ち、その中を確認した。


「部屋も綺麗になってるし、やればできるじゃん」


予想外の言葉にあたしはバラを見上げた。


バラはいつものあたしを見下すような目をしておらず、その言葉が本心からなのだと理解できた。


「そう……?」


「うん。これでかゆいのも治るんじゃない?」


バラはそれだけ言うと、あたしの部屋を出て行ってしまった。


バラが出て行った後をあたしはぼんやりと見つめる。


「あたしでも……できる?」


サナギはいつまでたっても蝶にはなれない。


空へ向けて羽ばたき、広い世界を見る事なんてできない。
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