干物ハニーと冷酷ダーリン


チラッと開けっ放しの寝室であろう部屋に目を向ける。


いろいろ考えたところで、色気もへったくれもない。


はぁ。取り敢えず体温計と薬を探すか。

買いに行けば早いのだが、ここの鍵が何処にあるのかすら分からん。


さっと部屋を見渡し、また溜め息をもらす。


泥棒でも入ったのかよ、ここ。
荒れすぎだ。


俺は掃除をしに来たのではない。


目についた衣服を一先ず端に寄せておく。

偶然にも棚の下段に入っていた救急箱を見つけたが、中身は空だった。

なんだこれは。意味ないだろ、こんなもの捨ててしまえ、紛らわしい。


結局、その棚を順番に探したが見つからず、ふっと家電の横にあるペン立てに視線を向ける。




………………、あれ体温計じゃないか?


いろんなペンがある中、それを手に取る。

ついに体温計を発見した。


次は薬だな。あいつ薬もあるって言ってたけど本当かよ。


半信半疑のまま手は動かす。

テーブルの下、DVDラック、テレビ台のどこを探しても見つからない。


その代わりに、通帳、印鑑、パスポートを見つけてしまった。
これは川本なりに、隠していたものかも知れないので、もとの位置に戻しておいた。



その時、キッチンから何かが落ちる音がした。

なんだ、この家。怪奇現象でも起きんのか?

っと思って見たが、実際は黒崎達の見舞いの品がバランスの悪い所に置かれていたのか、シンクの中に落ちたようだった。




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