女嫌いと男性恐怖症

 クソッ。
 泡だらけじゃねぇか!

 晶は、キッチンで髪まで洗うはめになった。

 トトトッの足音に気づいて顔を上げると、遥が不思議そうな顔をこちらに向けている。

「どうしてそんなところで、頭を洗ってるんですか?」

 誰のせいだと思ってやがる。

「泡の手で、髪を触っちまったんだ」

「案外ドジなんですね」

 ニコリともせずに、風呂場に消えた遥を呆然として見送る。

 なんだあれは。
 あんなに、悪態をつくやつだったか?

 そうか、あれか。
 飼い主に似るっていうあれだな。

 そうさ。ここは俺の家だ。
 なんで、ハルに気を遣って。

 頭にふわっと投げられたタオルに、思考を停止させると遥が風呂場を指している。

「そんなんじゃ、風邪ひきますから。お風呂入ってきてください」

「え、あぁ。ありがとう」

 晶の代わりに洗い物を始めた遥を見ながら、やっぱりこいつには敵わない。

 そんな思いで、風呂へ向かった。
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