女嫌いと男性恐怖症
第38話 スキ

 ひんやりとした空気が、酒で熱くなっている頬に気持ちいい。
 初日に直樹の家から、晶のマンションへ行く時と同じ帰り道。

 その頃よりも遥の近くを歩き、そして速度も遥に合わせてゆっくり歩く。
 それが心地よくて、もう失いたくなかった。

「アキはどうして、私のことクソガキって言うんですか?」

 隣を歩く小さなそれは、無邪気な顔を向けていた。

「クソガキだからだろ?」

 遥の中で自動で「大好きだからだろ?」に変わる。

 えへへっと笑う遥に、また晶は理解不能な顔をする。

 なんだよ。
 クソガキって言った時のむくれた顔が、可愛かったのに。

 ハハッ。酔ってるのか。
 今の俺はどんだけ素直なんだ。
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