ラブリー
いろいろと言いたいことがあるけれど、怒りのあまり何も言い返せない自分が悔しい。

「なずな」

「ふ、ふざけるのも大概にしてください!」

これが限界だった。

「あっ、なずな…」

逃げるようにオフィスを出ると、更衣室に駆け込んだ。

「もう、何なのよ…」

ロッカーに躰を預けると、わたしは息を吐いた。

急に名前を呼ばれた意味がわからない。

彼から好きだと言われた理由がわからない。

わたしを振ったくせに、何を思ってそんな行動をしてきたのだろう?

「無理だって言ったくせに…」

そう呟いて目の前のロッカーに手をかけたら、
「あっ、わたしのはこっちだった…」

他人のロッカーだったことに気づいたので、自分のロッカーへと足を向かわせた。
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