ラブリー
「――えっ…?」

目の前のその光景に、わたしは絶句した。

――小宮課長が誰かと抱きあってる…?

抱きあっているその人は…間違いない、あれは片瀬さんだ。

ああ、そんな関係なんだ…。

取引先の人だとか何とか言っていたけれど、つきあっているんだ…。

じゃあ、わたしは何だったの?

お試しだと言いながらつきあったわたしは、小宮課長の何だったの?

「――ああ、幼なじみか…」

自嘲気味にそう呟いて、フッと笑った。

幼なじみは幼なじみのままなんだな、昇格ってできないんだな。

「フフフッ…」

何がおかしくて笑っているのか、自分でもよくわからない。

でも笑わなかったら、自分がすぐに壊れてしまうような気がした。

小宮課長がわたしの存在に気づいていないうちに、わたしは早足でその場から立ち去った。
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