完璧執事の甘い罠
トントン、
ノックの音がして私はハッとする。
「ひな様、失礼いたします」
聞こえてきたジルの声に、胸が騒いだ。
思わず手に持っていた写真を机の引き出しにしまう。
「あの・・・」
「な、なに?」
入ってきたジルに、なるべく平然と答える。
ちゃんと普通にできているだろうか。
「これ、ひな様が・・・」
「あ・・・、え、と。うん・・・。風邪ひくといけないから」
ジルが手にしていたのは私が掛けたブランケット。
私がしたのだとジルは気づいてくれたらしい。
「私としたことが、気を緩めてしまいあのような場面をお見せしてしまい申し訳ありません」
「あのような場面って、うたた寝のこと?そんなの、仕方ないじゃん。疲れていたら休むのは当たり前だし、ジルにだって休憩時間とか、休みは必要だし」
むしろ休まな過ぎくらいに想っているし。
だって私が休憩している時でさえ、ジルは執事としていろいろと私の世話を焼いてくれている。
私の側にいない時だって、別の仕事がたくさんあることを知っている。