副社長は束縛ダーリン
「そういうところが男性に好かれるのかな。うーん、なにか違う気がする……。副社長が朱梨を選んだポイントってどこ?」
ユッコは私の頭から爪先までに視線を往復させて、考え込んでいる。
その視線をくすぐったく思いながら、彼女の独り言のような分析を聞いていた。
「見た目は普通すぎるほどに平凡なんだよね。強いて特徴をあげるなら、丸顔で童顔なところ。秘書課の知的美人な北川さんや、癒し系受付嬢の有村さんの方が、客観的に見て魅力的なのに、副社長に振られたらしいし……」
「え、そうなの!?」
「なんで知らないの? 社員のほとんどが知ってる有名な噂話なのに」
サラリと言ったユッコに、私は目を瞬かせる。
私と出会ってから、悠馬さんに他の女性の影はないと思っていた。
だからこそ、この前の望月さんとの一件は、私にとって青天の霹靂で、ものすごく慌ててしまったのだ。
社内で有名なその話を、私が知らなかった理由は開発部員だから?
他部署の人との接点がほとんどなく、開発室にこもって仕事をしているから噂話が聞こえにくい環境にあるのかも。
もしくは、恋人である私の耳に入れないようにと、周囲が気遣ってくれていたのかもしれない。