副社長は束縛ダーリン
「ユキヒラ食品の北さんにも、二、三お話を伺いましょう。今日は変わった出で立ちですが、いつも割烹着でお仕事をされているのですか?」
「は、はい。私だけ割烹着を愛用していて、たまに社員食堂のおばちゃんに見間違えられます」
緊張でガチガチに固まりつつ、至って真面目に答えたら、なぜか観客たちの間に笑いが起きる。
「そうなんですか」と言う司会者も笑っていて、マイクを口から離してコホンと咳払いをすると、次の質問をしてきた。
「『北朱梨のキタアカリコロッケ』という商品名はおもしろいですね。ご両親はジャガイモの品種から名付けられたんですか? ご実家は農業関係のお仕事を?」
「い、いえ、実家は靴屋です。私の名前の由来はちょっと聞いてないんですけど……両親にコロッケの神様からお告げがあったとしか思えないです。この名前のお陰で、私はコロッケ大好き人間に育ちました。コロッケ開発は天職だと思ってます」
またドッと笑いが起きて、「北さんは愉快な人ですね」と司会者に言われてしまう。
別に場を盛り上げようとしているわけじゃないのに、どうして笑うの?
緊張に恥ずかしさが加わると、ますます鼓動が速まって、ここから逃げ出したい気持ちにさせられた。