【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 

専務の少し冷たい指先。
そういえば、このひんやりとした手の感触を、心地いいと感じたなとぼんやりと思う。

でも、そう思ったのはいつのことだったっけ?

手の感触は覚えているのに、いつのことだか思い出せずに混乱していると、「じゃあクリーニングよろしくね」と専務に声をかけられた。

ハッとしながら慌てて頷き、役員室を後にする。

パタン、と閉まったダークブラウンの木目の扉によりかかり、天井を仰いだ。
手にした専務のスーツを抱え、大きく息を吸い込む。

「あ……」

その時、スーツにかすかに残った専務の匂いに目を見開いた。

「あぁ……っ!」

匂いに刺激された記憶が、一気に蘇る。


困り顔の専務に頬ずりをしたこと。
狭いソファーで専務にのしかかり首筋に額をこすりつけたこと。
胸に顔をうずめて『くっついてると、おちつく』なんて馬鹿みたいに甘えたセリフを言ったこと。

あまりの恥ずかしさに、顔から火が出そうなほど頬が熱くなる。

どうしよう、どうしよう、どうしよう!
専務を相手に、なんて失礼でみっともないことをしてしまったんだろう!

後悔と自己嫌悪に、今すぐ穴を掘って地中深く埋まりたくなる。
それか、家に帰って頭から布団を被ってそのまま冬眠してしまいたい。


 
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