【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「んだよそれ。っていうかその猫耳、なんであの御曹司と俺にしか見えないわけ?」
「多分なんだけど、ハチに会ったことがある人にしか見えないみたい」
「そんな馬鹿な話、あるかよ」
あきれたように言う千葉くんに、反論もできずに項垂れる。
本当に、自分の身に起きたことながら、とんでもない話だと思う。
「いつまでその猫耳付けとくつもりだよ。その間にお前の親に会うことになったらどうすんの? そんな姿見たら、すげぇ心配すると思うけど?」
正論を言われ、ますます項垂れる。
今までは、専務にしか見えないんだからまぁいいや、なんて思っていたけど、千葉くんや両親にも見えるとなると、そんなのんびりしたことを言っていられない。
「いつまでも、このままでいいとは思ってないけど……」
「じゃあ、どうすんだよ」
「クミコさんは、猫の未練を晴らしてやれば、自然と成仏するんじゃないかって」
「なんだよ、猫の未練って」
突拍子もない話に、千葉くんは苛立ったように舌打ちをする。
「ええと……。三大欲求?」
「はぁ? なんだっけ。食欲、性欲、睡眠欲ってやつ?」
「そう。それを満たしてやれば、自然と成仏するんじゃないかって」
俯いた視界の端で、黒い尻尾が不安げに揺れていた。