【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 

「おはよう」

丁度私が役員室から出ると同時にエレベーターが開き、秘書室や役員室のあるフロアに、ひとりの男が入ってきた。
背の高い、スーツの男。広い歩幅で進み、秘書室にいるメンバーに声をかけながらこちらへと歩いてくる。
彼がいるだけで、その場の空気が少し華やぐ気がする。

整った顔と、張りのあるよく響く声。そして他の人よりもくっきりとした輪郭。
人混みの中にいても自然と目を引くような存在感は、きっと生まれ持ったもの。彼は間違いなく、オーラがあるとか華があるとか言われる人種だ。

「はようございます、専務」

私が言いながら頭を下げると、少し垂れ目気味の大きな瞳が緩やかな弧を描いた。

「おはよう、詩乃ちゃん」
「冬木です」

親しげに私のことをファーストネームで呼ぶ彼に、眉ひとつ動かさずすかさず訂正する。
彼はふたりきりのときだけ、私のことを『詩乃ちゃん』と呼ぶ。

きっと、いちいち訂正する私を面白がっているんだろう。
秘書のことを名前にちゃん付けで呼ぶなんて、なにを考えているんだと無言で冷ややかな視線を送るけれど、彼はまったく気にする様子もなく、ご機嫌で役員室へと入っていった。

 
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