【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 

セットしたアラームの音で目を覚まし、薄っすらと目を開ける。


見慣れた自分の部屋。
カーテンの隙間から朝の光が差し込んでいた。

懐かしい夢を見たな、と思いながら体を起こし枕元に置いたスマホに手を伸ばしアラームを止めた。

ハチとはじめて会った日のこと、久しぶりに思い出した。
学校帰りに見つけた、捨てられた子猫。
その小さな体を胸に抱いて家まで走り、どうしても飼いたいとお願いした。
たぶんそれが、物心ついたときからずっとお利口さんだった私の、はじめての我が儘だった。

私は手を伸ばし、足元で丸くなるハチの小さな額をそっと撫でる。
すうすうと呼吸をするたびに上下するハチの丸いお腹。
人に触れられたのに目を開けもしない無防備さに、苦笑いしながらベッドから立ち上がった。

出かける支度をしながら、今日のスケジュールを頭の中でおさらいする。
今日は夕方から取引先の仕入れ業者との会食兼打ち合わせがある。
相手の担当者は話し好きの人だから、きっと予定より長引くだろう。
帰りはいつもより遅くなりそうだ。

そう思いながら、ハチの朝ごはんを用意する。
老猫用のカリカリと、猫用に乳糖をカットしたミルク。

いつもなら袋を開けた途端飛んでくるハチが、今日はベッドの上で丸くなったまま起きてこない。


< 27 / 255 >

この作品をシェア

pagetop