【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「詩乃ちゃんの家って、この辺なんだ」
取引先との会食を終え、専務の車で自宅のマンションまで送ってもらう。
「そこの信号を、左に曲がったところで大丈夫です」
「ちゃんと家の前まで送るよ。それにしても俺の車で移動する作戦、大成功だったな」
専務は道案内をする私の言葉に従ってハンドルを切りながら、小さく笑う。
「担当の浦野部長は少し残念そうでしたが」
「あの人すぐ話が脱線するから、酒抜きで打ち合わせしないと進まないし。今度から塔田酒造と会食の時は毎回車で行こうかな」
「……毎回ですか」
思わず顔をしかめてつぶやく。そんな私に専務はちらりとこちらに視線を投げた。
「俺の運転怖い?」
「いえ、そんなことは」
慌てて頭を振って否定する。
専務の運転は、とてもスマートで安全運転だ。
助手席に座るのがどうしようもなく落ち着かないのは、専務ではなく私の問題だ。男の人とふたりきりで車に乗ることなんて、めったにないから。
きっと専務は女の子をとなりに載せて運転することなんて、慣れているんだろうな。
私は運転中の専務の視線がちらりとこちらに向くだけで、ものすごく緊張しているっていうのに。