【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「このマンション?」
気づけば車は私の自宅の前に到着していた。
「あ、そうです。すいません、自宅の前までわざわざ」
近くの幹線道路で降ろしてもらおうと思っていたのに、マンションの目の前まで送ってもらってしまった。恐縮して慌てて頭を下げる私に、専務はおおらかに笑う。
「いいよ。実家に帰るついでだし」
「ありがとうございます」
送ってもらったお礼を言い、車の外に出る。マンションの前の歩道で頭を下げて専務の車を見送ろうとしたけれど、専務は運転席に座ったまま「早く中に入っていいよ」とヒラヒラと手を振る。
「車の中で少し電話するから」
自宅で待つ社長に連絡するのかな、なんて思いながらもう一度頭を下げる。
「お疲れ様でした」
「ん。おやすみ、詩乃ちゃん」
ハンドルの上に両腕を置き、その上に顎を乗せた専務が、くしゃりと顔を緩ませて微笑んだ。
その甘い声色に、優しい表情に、勝手に鼓動が早くなる。
この人は、私の前に担当だった秘書にも、こんなに優しく接していたんだろうか。
もしそうなら、三人の秘書が立て続けに異動になったのも仕方ないと思ってしまった。