おはよう、きみが好きです



その日の夜、俺は自分の部屋であいつから借りた『初恋マカロン』とかいう漫画を読んでいた。


それが……悔しいけど、なかなかに面白い。


主人公の蓮華が恋する旭が、女の子から振られた時に蓮華の作ったマカロンに心打たれるって話で……。



この、まっすぐで、なにか秘密を抱える主人公のことが気になってしょうがないヒーローの気持ちが分かるっつーか。


「……お?」


すると、あいつの文字で『旭くんの一途になった瞬間が胸キュン!』とか書かれた付箋を見つける。



「へぇ、あいつこんな字書くんだ」



丸字で、綺麗すぎない可愛い文字。

なんか、明るくて無邪気なあいつにピッタリだな……なんて、思ったり。



「つか……こういうシチュエーションが好きなんか」



一途に変わる瞬間。

どこか、女の子にガードが緩い俺とヒーローは似てる。


今まで、追われることはあっても、誰かを必死に追う恋なんて、したこと無いな。



『泣いてる時に後ろからギュッと抱きしめられるのは、女の子の理想!!』


「ぷっ、ふぅーん、意外と乙女じゃん」


俺に対しては、結構毒舌な泪の乙女な部分。

――トクンッ。

心臓が、静かな音を立てて跳ねる。


「うわ、なんだよこれ……」


なんか、胸が切ない。

服の上から胸を押さえれば治まるかと思ったけど……。

どんどん胸のドキドキは強くなっていく。

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