ソウル・メイト
「はいどうぞ」という中年女性の声と同時に、向こうからドアが開いた。

「近いから説明する時間がなかったわ。ごめんなさいね」
「あぁ、いえ・・・」
「先生。この方先生のお宅のお掃除に来られたんですって」
「あ。そうか。そうだった。ちょっとごめんよ」

ギッときしませて椅子から立ち上がった安藤先生は、意外と背が高かった。
そして先生の右手には、包帯がグルグル巻かれている。
あぁ、だからこの人は掃除を頼んだのか。

「はい。うちの鍵」
「あ・・はい。確かにお預かりしました」
「うちはこの奥。そのまま歩いて行って、最初にぶち当たったドアの鍵がそれだから。掃除道具や洗剤は、うちにあるのを自由に使ってもらってオッケーです」
「分かりました。では・・失礼します」

・・・あの時思ったより生え放題じゃなかったな、先生のひげ。
それより!
顔を上げた瞬間、先生が着ているTシャツの白地に黒でプリントされた大きなパンダの絵が、私の目の前にドーンって・・・。
ああいうTシャツを着てると、ごっつい感じの外見が、かなり和らいで見える。

私は先生のお宅がある方向へ歩きながら、思い出し笑いをしていた。

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