ソウル・メイト
「・・・あぁもしもし。おはようございます。私、国枝千鶴の母ですが・・・・・え?あぁ・・はい、そうでした。どうもすみません・・はい。ありがとうございます。失礼します」

最後の方は上の空で幼稚園の先生に挨拶を言いながら、私は機械的に赤い通話ボタンを押していた。

千鶴は風邪を引いているため、今週いっぱい休ませると、夫がすでに幼稚園へ連絡を入れていた。
これで千鶴は、今週幼稚園へ行かなくても、今週、近所の人たちが千鶴を見かけなくても、誰も不審には思わない・・・。

でも、千鶴は本当に風邪を引いてるんじゃ・・・昨日は元気だったけど、精神的なショックで熱を出してるかもしれない。
それに、千鶴が幼稚園を“休んでいる”間、誰が千鶴の世話をするの?

夫の用意周到さに、不覚にも感心してしまったけれど、それはすぐにまた、私の心に不安を呼び起こした。

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