マ王の花嫁 
「義理の父上に急用ができた。マーシャル、ジュピターの用意をしろ!」
「はっ!」
「お待ちください、王!」と背後からニコに言われたライオネル王は、やっと止まったけれど、私の腕はまだ離していない。

「何だ」
「一時の激情に駆られて闇雲に動くことは、一国を統治する王らしからぬふる舞いかと」
「俺にどうしろと言うんだ!」
「まずは冷静に。それから御命令を」

眉間にしわを寄せて、かすかに震えているような気がするライオネル王は、フゥと息を吐いた。
そして私の腕に置いている手に、わずかに力を込めると、今度はゆっくり歩き始めた。

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