マ王の花嫁 
「そうか。そのフィリップ翁は病気だと言ったな」
「ええ・・・。フィリップはここ数年、ずっと“ワシは59歳じゃ!”と言っているけれど、本当は70近い年齢だと思うので。体の融通が利かなくなってきているのでしょうね。体力も落ちているはずですし。なので、事業の運営は私とフィリップの二人でしていますが、花や茶葉等の収穫作業へ行く事は控えてもらっています」
「ほぅ。ではおまえは本当に植物の卸販売の事業を運営しているのか」
「はい。元は母が始めた事業だったので、私も幼い頃から収穫作業は手伝っていました。勿論、その年齢でできる限りの事を、という意味で。そこで、一緒に収穫をする人たちからも可愛がってもらって。母は私に植物の名前を教えながら、“心の耳を傾けて、彼らが何を言っているのか、よく聴きなさい。そしてその願いを愛情を込めて叶えてあげるのよ”と、よく言っていました」と私が言うと、ライオネル様はクスクス笑った。

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