願わくば、この先もずっと・・・
『あり得ない、ありえなさすぎる。なんなんですか!この家は』


私たちの関係は上司と部下。その関係が今のように変わったのは2ヶ月前のこと。6月の下旬の部署の飲み会だった。


その日の私はかなりの量のお酒を飲んだ。元々強くないこともあり、帰る頃にはベロベロに酔っ払っていた。


そんな私を送ってくれたのが彼、鈴木くんだった。会社から二駅の私の家までタクシーで送ってくれた彼は私の家を見て驚いた。散らかり放題、足の踏み場のない私の家。


『送ってくれてありがとねー』


そう言って追い返したつもりなのに、こともあろうか彼は家の中に入り、部屋を片付け始めた。

『ちょ、ちょっといいから。いつか気分のいいときにでも片付けるからさ』


家の中を掃除し始めた彼を見て酔いも冷めた。いくらなんでも上司の家に勝手に入って掃除なんて始めるか?見られたくないものもあるのに。彼の手を止めようとするとキッと睨まれた。


『村瀬さん!あり得ないです。よくここまでほったらかしにしてましたよね。こんなの僕、見たらもういてもたってもいられないんです。僕に見られたのが悪かったと思ってください』


そう言ってゴミ袋を出せと言われ、渋々手渡すと私を無視して夜遅くにも関わらず掃除を始めた。いつも『すみません』が口癖の鈴木くんがテキパキと私のゴミ部屋を動き回り片っ端から片付けていく。


1ルームの部屋だから逃げ場のない私はベッドの上からそれを見ているだけだった。
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