願わくば、この先もずっと・・・
『すごい。魔法みたい』


二時間足らずて足の踏み場すらなかったゴミ部屋は綺麗になった。思わず拍手を送ると彼はズンズンと私に近寄ってきた。


『村瀬さん、どんな生活してるんですか?それに気になっていたんですがこの家、食卓がないですよね?一体どうやってご飯食べてるんですか?』


そう、この家には食卓がない。あるのは布製の茶色のローソファとテレビくらい。最初からなかったわけじゃない。それにこんなゴミ部屋だったわけでもない。


一年前に彼氏と別れて自分のために何かをしようと思わなくなったのがきっかけ。元々綺麗好きでも家事好きでもなかったし、料理だって彼のために苦手ながら頑張っていただけで本当ならしたくない。


そんなのが積み重なった結果がこれ。料理なんてしなくてもコンビニやスーパーにはお弁当やお惣菜がある。それにスナック菓子だってお腹の足しになる。


ローソファにゴロンと寝転がってスナック菓子を食べたり、お弁当だって手で持って食べれば食卓なんていらない。


『食卓ね、買わなきゃいけないなと思ってたんだけど忘れてたのよね』


『食卓がないなんてあり得ないですよ!せめて小さなローテーブルでも置くべきです。それにキッチンはかなり綺麗だったんですが、もしかして自炊してないんですか?』
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