許し方がわからなくて
イトコさんから持たれてない反対の手で、私の腕を掴む湊くん。

「冴、離せ!お前には失望した!クビもしくは移動だ!さっさと帰れっ!」

「湊、信じてくれないの?」

うるうるした瞳で、湊くんを見上げてる。

「実際、お前の声だろうが!訴えられてもおかしくないぞっ!」

すごい剣幕の湊くんだけど。

今さらよね。

『いいわよ、帰らなくて。私が出ていくし。』

「そうそう、そうやって社長室でもくっつかせてんじゃないの?よかった、椎と何かある前にわかって。」

「椎は返してもらう。」

笑、蜜の順で湊くんを冷めた目で見ながら言う。

「コイツはイトコで昔からスキンシップが多いんだよ。」

「その理由がわかんないのか?湊は意外と鈍いな。お前に近づく女を昔から、脅して遠ざけてきたのはそいつだぞ。まぁ、似たような女だったから、オレも何も言わなかったが、椎が関わってくるなら別だ。」

壱兄の低い声。

イトコさんはビクッてなった。

心当たりがありすぎるのね。

『とりあえず出ていくわ。湊くん、お世話になりました。』

頭を下げて、湊くんの手を力一杯振りほどく。

大好きになる前でよかった…。

信じてもらえないのはツラいから。

「椎っ!」



< 22 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop