ただ、そばにいて。
「もうひとつの条件はなんですか?」
「夜は私のベッドで一緒に眠ること」
「……え?」

 悠斗は大きく目を見開いたあと、背中を丸めてもじもじと視線を泳がせはじめた。
 瑞希の言葉の意味を自分なりに解釈したらしい。

 言葉のとおり受け取るなら、ベッドで〝仕事〟をしろということだ。
 恋人のいない淋しい女を、若い体で満足させろと。

「でも、僕、あの……」

 悠斗は落ち着きなく視線を動かしはじめた。

 悠斗は女とコミュニケーションで寝るタイプではないと思う。
 快楽を求めて女をあさるような男は、もっとずるく、女を喜ばせる術を心得ている。

「寝ると言ってもべつに深い意味はないの。冷え性だから、添い寝してほしいってだけ。そういう友達関係っていうのも流行ってるんでしょう?」

 恋愛感情を持たず、体も重ねず、ただ寄り添うだけの男女の友達関係。
 
〝添い寝友達〟というのが若者のあいだで流行っていると雑誌で知ったとき、そんな都合のいい関係があるのか、と思った。

 でも、こんな寒い夜に仔犬のような男の子が隣であたためてくれたら、どんな気持ちがするだろう。

 悠斗は、本気で困ったような顔をした。
〝添い寝友達〟が流行りといっても、きっとメディアの世界が都合よくつくりあげた流行だろう。

「冗談よ。間違いがおきたら、私が柚月に殺される。毛布持ってくるからソファで寝て」
「……はい」

 瑞希はにこっと笑顔を作ってみせた。

 自分が都合のいい女扱いされたからといって、悠斗も同じように都合よく扱う権利はないのだ。
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