媚薬と私


結局、高藤由紀子とは、30分近くも駅のホームで話してしまった。


彼女も、電車が来たが乗らなかったのだ。


ただ僕は、彼女の自宅がここから遠かった為、話しを終える事にした。


「そろそろ、帰ろうか。」


「遅くなっちゃうからね。」


「はい・・。」


「次に来た電車にどちらかが、先に乗る事にしよう。」


「はい。」


先に来たのは、僕の方面の電車だった。


「俺の方が先に来ちゃったね・・。」


「次の電車にしようかな・・。」


「いえ、遅くなっちゃうから、乗って下さい。」


控えめに彼女は言った。


「じゃあ、乗るね。」

「今日はありがとう!」

「楽しかったよ。」


「私もです・・。」


「もう少し話したいので、今度、ご飯でも食べに行かない?」


僕の口から、自然と彼女に食事の誘いをしていた。




「はい!」


彼女は、二つ返事でオッケーを出した。


ただ、具体的では無かった為、半信半疑だった。


そして、この時点では、僕自身も、本当に食事に行くかは、疑問だったのだ。


しかし、彼女といると、心の安らぎを感じる。


これが恋なのかは、分からない。


僕は46歳。


いい歳をして、何を考えている・・・。



僕は電車に乗った。


電車の中から、窓越しに彼女に手を振った。


それを見て、彼女も手を振りかえした。


彼女は少し照れた表情をしているように見れた。
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