媚薬と私

高藤由紀子とは、一緒に仕事をしている時から、結構気が合った。


彼女は礼儀正しく、控えめな女性だ。


字がものすごく綺麗で、20歳年上の僕は恥かしかったくらいだ。


仕事もよく出来た。


安心して、仕事を任せられた。



みどりのような華やかさは無かったが、みどりに比べ、可愛いのは由紀子の方だ。


ここで言う「可愛い」とは、決して外見を言っているのではない。


”しぐさ ”が可愛いのだ。


また、素直で人の話しをよく聞いてくれる。


そして、僕をよく立ててくれた。


僕は由紀子にとって、上司だった為かも知れない。


しかし、僕が上司でなくとも、立ててくれる女性だと思っている。


真面目できっちりしているかと思えば、お茶目な所もある。


そういう所が、「可愛い」のだ。


由紀子の評判は、他の職員からも良かった。


彼女の事を悪く言う人は、誰一人としていなかっただろう。



みどりはスタイルが良く、綺麗な顔をしていた。


デート等の遊びをするなら、みどりだろう。


ノリもよく、一緒にして楽しい。


”いい女 ”を連れて歩くなら、みどりが最適だ。


しかし、本命なら、由紀子と言えるだろう。


「あと10歳若くて独身だったら、間違いなく由紀子を口説くよ。」


以前、冗談で、同じ職場のスタッフに言った事がある。


ただ僕は、みどりと二人三脚で仕事をしていた事もあって、職場の周りからは、
「貝瀬のお気に入りはみどり」と言われていた。


このように言っているが、実際の所、みどりに対しても、由紀子に対しても、
女として見る事は、無かった。


いや、正確には、見ないようにしていたのかも知れない。


だから、彼女達が退職してからは、上司と部下でなく、対等の付き合いが出来ると、
思ったのかも知れない。


由紀子とは、その感じが強く思えた。


僕が彼女に心を開けば、彼女もそれに応えてくれるのではないか?


僕はそう思った・・・。
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