媚薬と私
あれから、僕とゆかりは何事も無かったかのように、接していた。
普通に仕事場で顔を合わせ、時に普通にランチを一緒に食べる。
ある夜、ゆかりからメールが来た。
「旦那と喧嘩した!」
「今日、家に帰りたくないの・・・。」
ゆかりからのメールに気づいたのは、かなり経ってからだった。
僕は慌てて、メールをした。
「今、どこ・・・?」
「もう、家に帰ってきちゃったよ・・・(笑)」
「メールありがとね♪」
僕は、ホッとしたような、がっかりしたような気持ちだった。
もし、ゆかりからのメールにすぐに気づいていたならば、会えたのだろうか?
そして、家に帰りたくないのならば、どうしたのだろう・・・?
朝まで何処かへドライブに行って、いたのかも知れない。
一晩中、飲んでいたのかも知れない。
ゆかりは、どういう気持ちで、僕にそう言ったのだろう・・?
家に帰りたくないと女性に言われたら、男は誰だって、体の関係を考えてしまう。
今回は、オッケーだったのだろうか・・・?
当時、20代の僕には、分からなかった。
だから、結果として、会わなくて良かったと、今でも思っている。