最後の恋
逃げたいのに、逃げられない。


逃げたくないのに、逃げなきゃいけない。


矛盾する自分の心と理性との狭間で苦しくて苦しくて、激しく抵抗できない代わりに彼の肩を掴んだ。


頬を冷たいものが流れ落ちていくのが分かる。


それに気づいた彼が顔を離し、悲しそうなその瞳で私を見つめた。


「泣くほど別れたい、その理由は?」

「……ごめんなさい。」

「理由が言えないなら、俺だって認めない。」


そう言って彼は、私を解放した。


だけど泣いた顔ではすぐに出ていくこともできなくて、代わりに彼が出て行った。
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