最後の恋
『えー本当にいいの?杏奈から電話だって言えばすぐに飛び起きそうなのに〜』


言われたその言葉に、どきっとした。


紫乃は、どういうつもりで今の言葉を私に言ったのか。


私たちの関係に気づいてる?


だけど、彼女が酔ってて陽気なせいか今の言葉から私に対しての嫌な感情は感じなかった。


でも、婚約者?かもしれない紫乃にそう言われて複雑な気持ちにならないはずはない。


その時、誰か別の人の声が電話の向こうから徐々にボリュームを増すように聞こえてきた。


“ おい、勝手なことしてると後で礼央に怒られるぞ。”


聞き覚えのない男性の声だった。


『大丈夫だって〜真斗。心配しなくても変なことは言わないから〜。』

『もう言ってるだろう…ったくお前は。』


電話の向こうにいる真斗と呼ばれたその男性と紫乃の話し声は筒抜けで、頭の中はその真斗が一体誰なのか?とそればかりがグルグルと駆け巡っていた。

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